シングウィズリビングデッド

薄暗い道でのこと。
雨でもないのに白いレインコートのようなもので体をすっぽりと覆った女性に、すれ違いざまに「死ね」と言われた。
その声はとてもか細く、それでいてなぜか俺の脳裏にはっきりとこびり付いた。
実際はそんなことは言ってないのだろう。
だがしかし、言ったか言わないかなどこの際どうでもいいことなのだ。
聞こえてしまったということはその言葉が僕のどこかに住み着いているということなのだ。


毎日「今日から変わろう」などと思い続けてると、最終的には明日を変えないことが目的となる。
明日が変わってしまったら、今日から変わろうという新たな意識はもう湧いてこないのだ。
変えないことが変わるために大切だというある意味諦めにも似た気持ちで生きること、それすなわち自意識の死と言っても差し支えなかろう。
どうせ何も変えられないのでは生きているとは到底呼べず、そのまま死ぬまで死に続けるに違いない。
それでいいのか青年。
立ち尽くして死ぬのか青年。
そうだ、俺は今日から本当に変わるんだ。
変わることで変えてやるんだ。
俺がこの手で変えてやるんだ。
そう言って彼は白いレインコートで体をすっぽりと覆い、薄暗い道へと消えていった。


もう、何も変わらないと知っていながら。