疑わしいコピペ

■新日本窒素肥料が安全宣言で魚貝類を地元住民へ

原因不明の奇病が発生したとされるこの地域で不安を抱えた地元漁民が安全を宣言。
水俣漁業水揚の魚介類を安く供与する働きかけがはじまった。

海産物は奇病とは全く無関係。地元漁業の風評被害を少しでも手助けできれば」と同社幹部。
昨今の風評で地元の漁業は大ダメージ。安心安全を知ってもらうため新日本窒素肥料が地元水産物を買い上げ
地域や熊本市の皆様へ近海の良質な水産物を安く提供して風評を飛ばしてもらうのが狙い。
漁業関係者は風評で被害を受けており、水俣海産物の美味しさと安全安心を伝えて欲しいと話している。

昭和35年(1960年) 熊本日日新聞より

いくら昔の記事とは言え、こんなに表記揺れが発生するもんかね?
あと、新聞記事で「皆様」なんて使うのかとか色々疑問が。


ということで水俣病の歴史を調べてみた。wikipediaで。
水俣病 - Wikipedia

1946年:日本窒素がアセトアルデヒド,酢酸工場の排水を無処理で水俣湾へ排出。
1949年頃:水俣湾でタイ,エビ,イワシ,タコなどが獲れなくなる。
1952年:熊本県水俣で最も早期の認定胎児性患者が出生。ただし認定は20年後。
1953年:熊本県水俣湾で魚が浮上し,ネコの狂死が相次ぐ。以後,急増。
1954年:8月1日付熊本日日新聞で、ネコの狂死を初報道。

と来て次。

1957年:水俣保健所の実験で,水俣湾内で獲れた魚介類を与えたネコに奇病発生。
1958年:熊本県水俣湾海域内での漁獲を禁止。

熊本県水俣湾海域内での漁獲を禁止」してる。記事の2年前に。



更に調べてみると熊本日日新聞の記者の方の講演の内容があった。
http://www.southwave.co.jp/swave/8_cover/2002/cover0223.htm

熊日』に初めて水俣病関係が報道されたのは、昭和29年8月1日付[資料提示]の「猫てんかんで全滅 水俣市茂道 ねずみの激増に悲鳴」という見出しの記事で、日本の新聞史上初めて水俣病事件が報道された記事だ。今思えばこれには水俣病のいろいろなヒントが隠されていると思う。漁村120戸。水田もないので農薬ではないことが明らかであった。当時は、猫てんかんといわれていた。そして、よそから貰ってきた猫まで死ぬ。猫が食べるのは魚。貰ってきた猫まで死んでしまう。茂道は、患者の激震地区。その後、全く記事は出ていない。


次に出たのは1年9ヵ月後、1951年5月16日水俣病公式患者が保健所に届けられた病気について「子どもに奇病、同じ病原か」という記事が出た。以降、たくさん記事が出てくる。この時すでに人体被害は起きている。1952年には、水俣市漁業の依頼で漁業被害について県の調査が行われていた。漁民の間では、チッソ水俣工場の排水の被害と当然視されていた。が、しかし、その他では、一地方の不思議な現象としてとどまっていた。奇病といわれていた。新聞紙上「水俣病」となったのは1958年8月のことだ。

1958年時点で水俣病という名称が使われていたのに、1960年の記事で「奇病」などという表現をするだろうか。

当時、『熊日水俣支局長の松永さんが昭和34年4月に社内報に書いた言葉に「不知火の海は見た目には青く澄んでいた。水俣病患者病棟は市立病院の東端にあった。そこには20人あまりの患者たちがいた。川上さんがベッドに座ったまま、痩せ細った両手を人形のように上下に動かし、あわを吹いて苦しんでいた。発作は2時間も3時間も続いた。もだえ苦しみながら死んで行った水俣病患者の爪あとが、ベッドそばのコンクリートの壁に生々しく残っていた。水俣病とは何なのか、私はこの時書かねばならないと強く心に誓った。警察や市役所を取材後毎日のように患者多発地区の湯道、月浦、茂道と患者宅を取材に飛び回った。袋湾や漁協には漁の出来ぬ船が無残な姿で放置され、うつろな目で船を見つめる漁民達の姿がみられた。」当時の、水俣のムード、雰囲気が分かると思う。

昭和34年は1959年。件の記事の1年前には漁が出来る状況ではなかった。
そこから状況が好転したと考えるにはさすがに無理がある。
Taurosのインターネット案内-水俣病-年表

(1959年)9月から11月にかけて、不知火海の漁民が連合して工場と交渉する。11月2日のチッソ工場への漁民乱入事件は多くの人に水俣病事件の存在を知らせる契機となった。4000戸の漁民に対する漁業補償は1億円(要求22億)で12月16日手打ち、この結果に漁協員の多くは強い不満を抱いた。

この時期は漁民との紛争が多かったんだよね。


そして最後。
当時の新聞の見出しを集めたサイト。
新聞記事見出しによる水俣病関係年表
1960年のところを見てみると「水俣近辺での漁業は自粛」「漁民と会社は対決姿勢」「魚貝類から水銀検出」と、コピペの内容をほぼ否定する内容となっている。


状況証拠だけではあるが、以上の調査をもって件のコピペは「デマである」と判断。
国会図書館にでも行けば実際の記事が見れるだろうけど、見るまでもないんじゃないかなあ。
実際の記事が確認できればすぐにでも訂正するけど、多分間違いなくないだろうね。


こういうの調べるのは楽しいんだけど、楽しいだけで人生に何の役にも立たないってのが問題だよな。
あーやだやだ。


猫ぢから  愛は‘無償’にきまっとる

猫ぢから 愛は‘無償’にきまっとる