男もすなる軽音といふものを、女もしてみむとて、するなり。
それの年の四月の二十日あまり一日の日の申の時に、入部す。
そのよし、いささかにものに書きつく。
ある人、部長の十日二十日果てて、部員のことども終へず、勧誘などもせず、茶会を終へて、部室の前に出る。
かれこれ、知る知らぬ、入部す。
年ごろ、よくくらべつる澪律なむ、別れ難く思ひて、日しきりにとかくしつつ、ののしるうちに、紬入る。
(中略)
思ひ出でぬことなく、思ひ恋しきがうちに、この部室にて過ごせし女子の、もろともに出ねば、いかがは悲しき。
部員もみな、女子たかりてののしる。
かかるうちに、なほ悲しきに堪へずして、ひそかに心知れる人と言へりける歌、卒業は終わりならず 変はらず仲間なりけり。
なほ飽かずやあらむ、また、かくなむ。
大好きと言ふなら 大大好きと返さんとぞ言へる。
忘れがたく、口惜しきこと多かれど、え尽くさず。
とまれかうまれ、とく破りてむ。
口語訳
男の人もやっているバンドというものを、女の私もやってみようと思い、書き記す。
ある年の4月21日の午後4時ごろに入部することに。そのときの様子を書いてみる。
ある人が、部長になって10日ほど過ぎ、部員が入らず、勧誘などもせず、ティータイムを楽しんだ後部室から出る。
(軽音楽を)知らない人が入部。
この数年間、とても親しくしていた澪と律は、とくに別れ難い心境で、一日中、何やかんやと立ち回って、大きな声で言い騒いでいるうちに紬が入部した。
(中略)
思い出さないことは何一つなく、恋しく思うなかでも、この部室で過ごした女の子がいっしょに卒業しないのが、どれほど悲しいことか。
軽音部の人たちはみな女の子に寄り集まって大騒ぎしている。
そうしているうち、やはり悲しさに堪えられず、ひっそりと気心が知れている人と作った歌、
「卒業は終わりじゃない これからも仲間だから」
と歌ったことだ。
それでもまだ満足できないのか、またこう歌った。
「大好きって言うなら 大大好きって返すよ」と。
忘れられず、残念に思うことが多いけれども、全部を書き尽くせない。
まあともかく、こんなものは早く破いてしまおう。
『けいおん!』は、4コマで書かれたバンド漫画。
桜が丘高校に入部した平沢唯が、高校を卒業してN女子大学に合格するまでの出来事を叙述する。
「男もすなる軽音といふものを、女もしてみむとて、するなり」とあるように、女性の視点から、いくらかの虚構をおりまぜながら、日々の記録を綴っていく。
作者のかきふらいは、平成19年(2007)ころから平成22年(2010)ころに活躍した漫画家。
芳文社の勅により、『けいおん!』(2007)を執筆した。
同人誌にもすぐれ、同人としては「涼宮ハルヒの憂鬱」などを執筆した。
ぼくは親分じゃないので古文のことはよくわかりません(;´Д`)所々おかしいところがあると思います